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April 2008 アーカイブ

April 5, 2008

chapitre 01  Vaneau

いつ頃からだったか、もうお花を見ることさえも嫌になっていた。

日本のホテルの花屋で5年、独立して、
自分の色一色の花屋「6contents」として6年活動していた。
大きな仕事も、毎日のお店の仕事も、たくさんたくさんこなして、
無我夢中で突っ走っていた。
しかし、そんな日々の中で、もう取り返しのつかないくらいの
空虚感が大きく形をなしていた。

「自分の花には、中身がない。」

そう思い始めてから、ボクは、もう一度お花を始めた頃のように戻って、
今度は中身のある花をしっかり身につける仕事をしたいと思った。
そうしなければ、もう先に一歩も進めなかった。
そのために、大きな意味を伴う長い歴史があり、
クラシックな花とモダンなスタイルの花が共存する
フランスで出直そうと心に決め、
たくさん想いを込めた自分のお店を閉めて、
ぼくは、片道切符を手にパリにやって来た。


「エリック:ショバン」「セバスチャン:マンゴジ」「クリスチャン:モレル」
「オリビエ:ピトゥ」「ステファン:シャペル」「パスカル:ミューテル」など

今のパリの花業界を引っ張るそうそうたる花屋を歩いて回り、
自分の心が動いたお店に飛び込もうと思っていた。

あるお店の前で、ボクは足を止め、導かれるようにお店に入った。
そこにいるだけでとても気持ちがよくて、
花はとても生き生きとし、いつの時代かわからないような
独特のクラシックな雰囲気と、モダンな花の飾り方がなされていた。
そして、なにより、言葉では表せないような、体を包み込む優しい雰囲気が
ごちゃごちゃに絡まっていたボクの頭のひもをスルッとほどいた。


ここで働きたいと心から思えた。
花屋の名前は、「BAPTISTE」 バティストといい、
今や、パリを代表する花屋だった。

偶然その場に居合わせたオーナーは、日本から突然やって来たぼくの
言葉にひとつひとつうなずいて、ゆっくりとこう言ってくださった。

「いいですよ。いつから来ますか?」

ぼくは、間髪入れることなく、はっきりと大きな声で答えた。
「明日から来ます!」

こうして、ボクの花屋人生の第二幕が始まった。


息上がるままに、パリを一望できるモンマルトルの丘にやって来た。

今年はもう見ることがないか、と思ってやって来た桜が
サクレクール寺院の麓で満開に咲き誇っていた。

一度は辞めようかとも思っていた花屋の仕事だったけど、
それは本心じゃなかったことに気がついた。

なぜなら、涙が止まらないほど、幸せだと感じたから。


April 18, 2008

Chapitre 01 Strasbourg - Saint Denis

ここに一枚の絵がある。

ひょっとして、見覚えがある方もいるかもしれない。
10年ほど前、「花時間」という雑誌に、
今ほど注目されていなかったパリの花屋さん特集の
記事が載っていた。

ちょうど、ぼくも花屋になって2、3年経った頃だ。
そして、その特集の中に、この絵が飾ってある花屋さんが
取り上げられていた。
ぼくは、この絵が飾られた花屋さんの店の雰囲気に
とても感動して、いつかこんなお店が持ちたいと願った。

そして、いつか自分がそんなお店を持ったときにと思い、
この写真の絵を油絵で模写して、出来るだけ忠実に再現して、
その出来た絵をいつかそんな自分のお店に飾れる日を夢見て、修行していた。

その絵は、気がつけば実家の倉庫に追いやられてしまったのだけど、
それでも、頭の中には、それがボクの理想として、
ずっとあり続けていた。

さて、話は変わって、バティストでの初日を迎えた。
彼は、ぼくに初日から、入っていた注文のブーケを
大方すべて作らせた。
おそらく何かを確認するためだったのだろうけど、
どこまで応えるべきかも分からなかったので、
とにかく持ち得るすべての自分の花をだして、
あとは、とにかく素早く仕上げる事に専念した。


感じた事を言うと、パリは、花屋が職人として位置づけられている。
日本の流行のように、奇をてらったもの、モダンと言われるもの、
見た目のお洒落ばかりが先行した仕事とは違い、
とにかく素早く、そしてその中でも、一本一本の処理をきちっと施し、
仕上げる形も徹底して綺麗く保たれている。

そこそこの時間のなかで、繊細で分かりにくい物は、
誰にでもつくれるけれど、それでは花屋が花屋である意味が無い。

自分は、日本にいたときから、仕事の手際は人一倍よい方だと思っていたが、
バティストの仕事っぷりを見ていると、
まだまだ自分には余計な動きが多い事に気づかされる。

そして、バティストの、そんな仕事をこなす背中を見ているだけで、
学ぶ事が山ほどある事を、改めて想う。


さて、話は戻って、その初日。
作業場に入って行くと、
オーナーの部屋のドアに一枚の絵が飾ってあった。

ぼくは、夢を見たように、一瞬立ち止まって、動けなくなった。

そう、ぼくがこの10年、ずっと目指していた、
あの日、あの本で見た、お花屋さんの絵だった。

ぼくは、すうっと寒イボが立ち、そして、

ほっとうなづいた。

そういうことなのだ。

いろんな道を通ってきたけれど、
長い時間をかけて、ひとつ夢が叶っていたのだ。


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