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Juni 2008 アーカイブ

Juni 14, 2008

Chapitre 01 Chateau Rouge

パリ、モード界の帝王と言われたイブ:サンローラン氏が6月1日に亡くなった。
ぼくは、そのニュースを、その日、配達途中の車の中で、突然バティストに聞かされた。
しかも、驚いた事に、その葬儀の装飾を、イブ:サンローラン:リブ:ゴーシュのメゾンからご依頼頂いたのだと言う。

こりゃとんでもない仕事が入ったと思っていたのもつかの間、翌日早朝から2千本近いカサブランカをはじめ、その他花々がいっぱい入荷して来た。
葬儀はその3日後にあったのだけど、それまでに百合はいい感じに咲かせて、もちろん花粉という花粉を取って、使用する花器台は、相変わらず手作りでこしらえて、しかももちろん忙しい日常業務もこなしつつ、とうとう装飾の日を迎えた。

会場は、パリの数ある教会の中でも、とても趣も深く、歴史あるサン:ロック教会で行われた。
教会椅子が並ぶ道の脇には、既に、老舗花店「moulie」によるとても豪華なジャスミンの装飾がなされていた。
そして、それにそって、ずらっと並ぶ、いつもより豪華な椅子群。
座席を見ると、明日ここに座るそうそうたる面々の名前が書かれた紙が乗せてあった。
「ニコラ:サルコジ 現大統領」 「シラク 前大統領」「カトリーヌ:ドヌーブ」 「ジョン.ガリアーノ」「ジャンポール・ゴルチエ」「ソニア.リキエル」「ヴァレンチノ」「ランヴァンのアルベール・エルバズ」「クラウディア:シファー」 「タカダケンゾウ」などなど、大統領、大女優から、新旧デザイナーに、スーパーモデルまで
業界を代表する著名人の名前が連ねてあった。
これを見るだけで、身が震える想いになった。
ある大きな歴史の1ページの瞬間に自分が居ることにとても感動していた。
ふと隣を見ると、うちのお抱えの花配達おじさんこと、クリスチャンも興奮気味に奥さんに電話をしている。
「おい!聞いてくれ、サルコジ大統領の隣の席は、今話題の新しい奥さんだ!
おい!カトリーヌ:ドヌーブも来るぞ!」
フランス人とてやはりこの状況は興奮するらしい。


装飾は、メインとなる5体の大きな装飾と、ステージの淵に置く帯状のアレンジ、そして、その他、各有名メゾンからの贈り花であった。
もちろん、それ以外にも溢れんばかりの花々がいろんな方々から送られて来ていたが、それらはすべて教会の外側に並べられた。

さて、この日のためにせっせとこしらえた真っ黒の花台におとな三人掛かりで運ぶとても重い青銅の大きな花器を置きそこに各器ともに200本ほどのカサブランカと、枝もの、足下にアスパラガスを垂らして、それを5体並べた。
圧巻。大きな装花を高い花台に乗せて見上げる様は、もはや花を見ているというより、巨大な芸術を見ていると言った方が分かりやすい。

後ろに施されたジャスミンの壁が、さらにその雰囲気を一層壮大なものにして、教会の崇高な雰囲気も手伝って、もういつの時代に生きているのかさえも
分からなくなってしまうほどだった。

メインの装花は、すべてバティストが施したが、そのアシスタントをしていたボクに最後に大事な仕事が与えられた。
その5体の装花の足下に最後にアスパラガスをたくさん垂らすという締めの装飾を任せてもらった。
しかし、細長い台に、重たい花器、200本の百合である。すこしでも強くあたるとすべてを倒しかねない。
変な汗をいっぱいかきながら、ぼくは5体すべてに最後の装飾をした。

その装花が終わる頃には、各メゾンからの花も到着し始めた。
大体すべてが、昔ながらの形で、大きく平べったいアレンジだった。
そんななか、一体だけおおきな白いリース状の花が届いた。
イーゼルもモスなどで施されていて、それはとても目を引いた。クリスチャン:ディオールからのその花は、パリの花業界の維新児、エリック:ショバンによるものだった。
今ままでにない花を。
彼らしい、勢いのある花だった。


その他にも、いろんな花屋の、それぞれのスタイルを一斉に拝見できた。
やはりみんなそれぞれ、十人十色の花である。
モダンな花、創作意欲の溢れた花、
昔ながらの花、とびきりおとなっぽい花。

白一色なのに、花は本当にいろんな顔を見せる。


準備も無事終了し、葬儀も世界の注目の中、終了した。
さて、汗水垂らしてやっと仕上げたこの花を、あっという間に撤去である。
しかも、撤去は、ぼくと相棒ジェロームの二人だけに託された。

再び現地について呆然とした。

二人で片付けられる量ではなかったからだ。

やれやれ、という顔をして、ジェロームがひと言。

「Ben... On y va!」さて、やるか。

かくして、咲き誇ったゆりの花粉を頭からつま先までいっぱいにつけて
半日かけて片付けたぼくらは、1日の仕事後、地下鉄に乗って、同乗した乗客に笑われながら家路についたのでした。


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