みんなを乗せて
その人はアイロニーがまだ3年目だった頃に履歴書を送ってきてくれた人でした。
仕事だけが先行し、まだ人を雇い入れることのできる器の片鱗すら見えない頃のアイロニーでした。
花の経験はない人でしたが、柔らかい雰囲気がアイロニーにはあっていると思い入ってもらいました。
人を雇うということがいまいち理解できていなかったころなので、今考えると恥ずかしくなる職場環境でした。
職人であればいいと思っていた僕の元で、理不尽な文句をつけられながらもやめずにいてくれる人でした。
天然のところもあり、高速ガス欠事件や子機水没事件など数多くの伝説も作り上げてくれました。。。
一人では抱えきれないほどの契約装花をもらっていた時期、他のスタッフが辞めてしまい二人になった時期は、終わりの見えない仕事におかしくなりそうな僕のよき話し相手になってくれました。
仕事が遅くなり、帰りに強盗に襲われたこともありました。本当にごめんなさい。
それでも、ずっと続けてくれました。
そんなモリッチに赤ちゃんが出来、アイロニーを休むことになったのは一昨年のことでした。
冷えは女性にとって絶対によくないのに、花があるからなるべくストーブをつけるな!とか怒っていた無知な頃もあったので、おめでたの知らせは嬉しかったです。
元気な男の子が生まれ、周年パーティにも駆けつけてくれます。
そんなモリッチには本当に感謝していて、永遠にアイロニーの一員だと思っているし子育てが落ち着いたらまた復活して欲しいと思っているのですが、
こんなことを言ってくれました。
アイロニーを離れてしまったけど、少しでもアイロニーに関わっていたいので出資したい。
個人事業に毛が生えた程度の会社なので出資を受けるような器もまた持ち合わせてないのですが、
子育てで店を離れることになったスタッフが、
きっと自分の子供の将来を一番に考える母になったスタッフが、
アイロニーに対してそんな風に思ってくれていることが本当に嬉しくて嬉しくて。
でも、そうやって気持ちを預かることの重みも感じました。
法人化するとき、自分が作った会社がいつのまにか自分のものではなくなるから気をつけなさいと教えてくれた人がいました。
そんなことさせるかーい、とそのときは思いましたが、そうではなかったようです。
こんな店にしたいと自分だけの想いを乗せていた頃とは違い、
関わってくれる人が増えて、その人の生活や人生にも影響力を持ってきます。
そうやって、みんなのものになって、自分だけのものではなくなっていく。
そして、社会にも役立てるようになって、人に必要とされるようになって会社というものは存続していくことが出来る。
そう思うと、初めからアイロニーは自分のものではなかったのかもしれません。
そして、多くの人の想いがつまっている花屋というのは、とてもキレイなもののように思います。
そんなことに、また気づかせてくれたモリッチに感謝です。